眠れない人のための「もう恋なんてしない(槇原敬之)」徹底解析。~眠れない夜。終わらない夜。~
こんにちは、犬飼です。
眠れない人のために、また眠れない僕のために、今日も音楽を解析していきたいと思います。
音楽って結構アバウトなものと見なされてますよね。
気軽に手に取って、あっさりと消費されていく音楽。
その音楽をもう少し詳しく知りたい、もう少し奥を探りたい、
そう思ってこのサイトでは、音楽の解析を行っています。
音楽を聴いているとき、僕の頭の中はどういう化学反応が行われているのか。
音楽を聴いているとき、僕の頭の中にどういうイメージが蠢くのか。
音楽を聴いているとき、僕の頭の中にどういう物語が進むのか。
そういうところを詳しく見ていきたいと思います。
今日解析するのは「もう恋なんてしない(槇原敬之)」です。
いつものようにYOUTUBEの動画の再生時間に沿って、僕がどう感じているのかを書き記していきます。
それではYOUTUBEの音楽動画を再生していきましょう。
「再生時間0:00~0:10」
イントロがはじまっていきます。
牧歌的。
温かい。
平凡。
結構ありきたりな、普通な、角がないはじまりです。
どこか気の抜けた、少しやる気がないようにも感じられます。
脱力。
緊張の糸をほぐす。
音楽を聴くときは気づいてないぐらいの緊張を、僕はしているのですが、
その緊張、強張(こわば)りを緩和(かんわ)するような、やわらかい滑り出し。
あまりにも音の”テンプレ”的な始まり方。
それは少し、聴き手をからかっているのかと裏を読んでしまうような、正直すぎる初手。
裏を探そうにも、見えない。
正直すぎて、少し恐い。
ここからこの音楽はどこに向かうのか。
こここから僕ら音楽の聴き手(聴く側)はどこに連れていかれるのか。
平坦(へいたん)すぎる入り口から、僕たち聴き手は音楽の奥に入っていく。
「再生時間0:10~0:14」
イントロの途中、再生時間で言えば0:10辺りから、少し音が下を向く。
少しの悲しさを感じる。
再生時間0:00~0:10とは、わずかだが様子が変わってくる。
少し寒い。少し温度が下がって、その温度の変化が自分の肌にも感じられる。
再生時間0:00~0:10でこれから入り口に入ろうと思っていたら、
いきなり出口が前にあるような感覚。
再生時間0:00~0:10は朱色だった背景が、その色が濃くなって、
黒くなっていってしまうような感覚。
少し怖い。
こんな急に変化して、聴き手である僕らの対応が間に合わない。
こわい。
前に進むのに躊躇(ちゅうちょ)しながら、それでも僕ら聴き手は促され、
その先へと歩いていく。
「再生時間0:14~0:32」
少し広いところに出た。
僕らはもう、気持ちよさにつられて無作為(むさくい)に腰をふってはいない。
再生時間0:10~0:14辺りの聴き手の心理状態とは違って、少し冷静になっている。
周りを見ている。
呼吸を深めにとりながら。
雨が降っていた。服が濡れて、身体も少し濡れてしまっていた。
悲しい時は、その悲しさを出すことで、悲しさを緩和する。
泣きたいときは泣くことで、その切なさを振り払う。
君は知っている。
君はこれまで何度も、その暗い穴から抜け出してきたのだから。
再生時間0:14~0:32あたりは僕ら聴き手は自分自身のまとっているものを確認する時間。僕らの身体を確認する時間。
僕らの身体は、僕らの歴史、僕らの軌跡。
自分自身の身体をもう一度見つめて確認して、
自分の弱さ、強さを再確認していく。
僕らは無作為に腰をふってはいない。
そこに道筋がある。そこに道筋があると信じて、これまで歩んできた。
そろそろ自信を、取り戻してもいいはずだ。
祝福の鐘(かね)の音に、そろそろ応えよう。
さあ、歩みを進めよう。
「再生時間0:33~0:34」
歌い手(槇原敬之)の声がはじまる。
何か、かなり待たされた印象を感じた。
イントロがすごく長く感じた。
歌い手の声のファーストインプレッションは、思っていたより強さがない。
槇原さんの曲は何曲か聴いてきて、ある程度その声の強さを知っているけれど、
この曲のその声のファーストインプレッションは、弱い。
こんなに弱かったっけ。
その声は僕ら聴き手に真っすぐに訴えかけるというよりも、
その声は僕らには向かわず、違う方向に向かって訴えているように感じた。
その姿を、聴き手である僕らは見ているような・・・。
聴き手である僕らがその声を心配してしまうぐらい、歌い手の意思が弱い。
弱っている。
音楽というのはあくまで舵を握るのは歌い手の声。
それにつられて僕ら聴き手は動ける。
歌い手の声に迷いを感じ、僕ら聴き手もそこにとどまっている。
物語が鈍化している。
何があったのだろう。歌い手に何があったのだろう。
「再生時間0:34~0:51」
喪失。
自傷。
乖離。
僕ら聴き手は、歌い手の声の渦に飲み込まれていく。
僕ら聴き手の方が冷静だ。
歌い手の声から、思いがどんどん溢れているのを感じる。
すごく、個人的だ。
この歌に主張とか伝えたいこととかはたぶん無い。
ただ単純に、喪失の告白。
僕ら聴き手は冷静だ。
冷静に、その告白が彩(いろど)られていく様を見守っている。
こういうところが、芸術のすごいところ。
(音楽も芸術のひとつです)
特殊を普遍にする力を、芸術は持っている。
「再生時間0:51~1:09」
みなさんの好みの異性ってどんな人ですか。
僕らがその問いに答えようとする時、どうしてもまず、初恋の人が頭に浮かんでしまう。
初恋の人が僕らにとっての、愛の原型。
そこから亜種(あしゅ)が生まれる。
初恋の人への思いを基(もと)にして、今現在の自分にあった愛を探す。
なんて悲しい性(さが)なのだろう。
なんて綺麗な性なのだろう。
原型からは逃れられない。
初恋からは逃れられない。
君を求めるとき、君じゃないあの子を求めてる。
愛を探しているとき、そこに手付かずの愛は残っていない。
離れていく、僕と君と。
離れていく、僕自身と。
気づいたら僕ら聴き手は、歌い手のペースにはまっている。
歌い手が作り出すテーマパークで、僕ら聴き手は夢中になって遊んでいる。
でもそろそろ閉館の時間が近づいているのを感じている。
早いな、もう閉館の時間か・・・。
1曲は、本当に短い。
夢を見られるのは、ほんの一瞬だ。
「再生時間1:09~1:27」
閉館まぎわの、最後のパレードが行われている。
とても綺麗だ。とても賑(にぎ)やかだ。
別れる前の、最後の会話。
なんでこうなったんだっけ・・・。
これから、僕から、君がなくなる。君の存在が消える。
僕はひとり。僕はまたひとり。
個人的な出来事が、まるで普遍的な出来事に。
歌い手の影が、僕らを覆(おお)ってしまった。
僕ら聴き手は”個”ではなく、この曲が作る物語の一部になっているように感じる。
映画を見せられているような曲だね。
すごくすごく平凡なストーリーなのに、魅せられる、見入ってしまった。
「再生時間1:27~1:27」
曲のサビ。
曲のサビというのは曲のゴールで曲の到達点。
そしてサビで、聴き手と歌い手は分かれる。
サビを境(さかい)にして、聴き手は音楽が作る魔法から解かれていく。
曲のサビはてっぺんであり、ここからは下っていくだけ。
ゆるやかにゆるやかに、音楽が作る世界から僕らが生きる現実世界に戻っていく。
歌い手が作り出していた世界から距離を置いていくことで、
僕ら聴き手は少しずつ、身体が軽くなっていく。
音楽を聴くことで僕らは研(と)がれて、心をリフレッシュできる。
この曲が作り出していた世界から離れていくことで、
僕らは少しホッとする。
過去というのは、やはりつらい。
取り戻せないことを見つめ続けるのは、心が重い。
はじめていこう、新しい自分を。
はじめていこう、新しい愛を。
もう恋なんてしない
槇原敬之
眠れない人のための「もう恋なんてしない(槇原敬之)」徹底解析。
~眠れない夜。終わらない夜。~
終わり。
後書き。
おつかれさまです。
今回も解析してておもしろかったです。
いい曲ですね。