音楽解析on twitter 解析曲名「もう恋なんてしない(槇原敬之)」のブログ上での掲載。
※ツイッター上に最初に載せた文章から、一部修正しています。
悲しみはすぐに消えていった。
失恋の喪失を温もりある遺産へと変換させながら。
失くし物の型を、丁寧にあっさりと型取りながら。
今になって思えば、別れたことが心地いい。
今になって思えば、離れたことが清々しい。
納得するために・前へと進むために、君は死に近しい想いを生に執着する想いへと生まれ変わらせてゆく。
この曲は命令の物語。
命令が無ければ、君は動けない。
誰の命令?何のための命令?
知らないうちに無意識に、君は背中を押されている。
止まらために、終わらないために。
死なないために。心枯れないために。
別に、終わってもよくね?
別にもう、死んでしまってもよくね?
何故まだ君は生きるのか。
何故まだ君は求めるのか。
何故まだ君は愛を欲するのか。
それらの令を誰が出しているのか。誰が君の背中を押しているのか。
その謎を、この曲と共にこの曲の中で探っていきましょう。
お楽しみは、これからだ。
別れた直後は無表情のまま、君は独りで虚ろ虚ろと、自分の部屋に閉じこもっていて。
これまでの二人でいた時間があまりにも鮮烈すぎたから、
今のこの独りの時間との落差に心追いついていなくて。
時間というものは、ああいうものだったんだ。
二人が共にいて・二人が時間を共有して初めて、時間というものは生まれ動き出していくものだったんだ。
失くして初めて、君は知り。
別れて初めて、二人がいた時間の価値を・意味を、君は理解していって。
心落ち着けるまで、まだだいぶ時間はかかりそうだ。
丹念に入念に慎重に、君は彼との思い出を噛みしめている。
手にしたものが、大きすぎた。
学んだこと・味わったもの・心に容れたものが多すぎて、
別れて初めてそれらの処理を静かにようやく行えている。
挫折という言葉の重さが、今分かる。
君の何もない人生に初めて光りを与えてくれた彼はもういない。
脆い君、ぽつり。
か細い君、ひたりひたり。
ああ、もうしばらくこのまま、無表情を続けて。
出来るだけ永い間、何も感じないまま過ごしていたい。
心の整理の時間、久遠に久遠に延びていった。
思えば君は、馬鹿だった。
振り返れば、彼との時間の中で君が一番経験出来たことは、恥をかくことだった。
知らなければ、恥をかくこともなく。
出会わなければ、君は君を隠し続けて。
彼と出会って初めて、君は君を露わにして。
解かれる感覚、知る感覚、研ぐ感覚。
それらの感覚が彼と出会ってから澄まされていって。
仮面を被り続けていては、正式なヒトではあらず。
自分が仮面を被っていたことすら、彼と出会う前の君は気づかなくて。
子供の時にふと思った「生きるとは何か」という問いに、今は少しだけ答えれる気がして。
失ったものは大きいけれどしかしまた、得たものも計り知れない。
独りの時間を今はただ、それらを静かにじっくりと探っていくことに割いていこうか。
まだまだたくさん、綺麗な実は実っている。
ここからこれから。
そう、ここからこれから。
失くしてからの、リスタート。
深呼吸をして、自分の心に新たな部屋を増築しながら。
幾多の思い出の写真をていねいに、心のアルバムに揃え整理しながら。
記憶に残る一枚一枚の思い出の写真が、とても鮮やかに君の心に焼き付いている。
記憶って、こんなに鮮やかに残せるものなんだ。
その鮮やかさが、君の心拍を大いに揺らし慌てさせ。
美しさって、紙一重。
ずっと心を閉ざしていたら、危ういものには触れられない。
時に死に、時に落ち込み、時に自分の心が滅びゆくことで、
私たちは頭上に燦然と輝くものを知り拝みゆく。
未だ君の心は揺れ続けて。
未だ君は彼の影を追い続けていて。
君の心というもの、いつまでもいつまでも君を迷わせ続けていた。
帰りたくない。帰り方が分からない。
ずっとこのまま。
届かないまま戻れないまま。
ずっと、このまま。
酸素が君の思考を応援してゆく。
深い呼吸の連続によって。自分の迷い心から一定の距離を置いてゆき。
いつまでもいつまでも、暗い深海で潜り続けてはいられない。
誰かに呼ばれて誰かに促されて、君は再生を試みてゆく。
何もしないまま何も求めないまま、ただただ再生、待ち続け。
心に何も映し出さず、心の中の空白・空欄を把握しつつ、ただボーっとして。
0の時空にいる自分を、そのままにしてほったらかしにして。
久しぶりに感じる、何も持たない自分だ。
積み重ねるたびに積み重なったものをすり潰し、ペチャンコにしてまた新たな自分を乗せてゆく。
これまで生きたことで出来た地面の固さを自分の足で確かめて。
ゆっくりとゆっくりと、進みたいと思うのなら進み、まだ休みたいなら存分に休み。
君の淡い想いの浮上と共に時間はまた、静かに緩く動き出してゆく。
ふう。
深いため息、それは始動の合図だった。
不格好とかかっこ悪いとかは、言ってしまえば別にどうでも良くて。
二人重なり合う時間は、心と心がただただじゃれ合っていて。
色々な要素をボトルに入れて、シャカシャカ混ぜて栄養ある飲み物へとしてゆく。
時に不味く時に見た目悪く。
しかしそのどれもが、結局は君の栄養になっていき。
辛い経験悲しい経験それら自体はジャンクだけれども、
それらに愛しさを加えることで栄養ある飲み物へと変えてゆき。
死なない限り終わらない限り、君は誰かに押されて愛を知り求め欲してゆく。
愛を知るためには戦力独りでは心許なくて。
愛を理解するためには君ひとりの頭では足りなくて。
心のモヤモヤ晴れぬまま、君は新しい自分を始動させていく。
思い出の整理は完結しないまま・想い未だ引きずったまま、新しい君は始まってゆく。
誰かの令に気持ちよく突き動かされて、君、進み始めてゆく。
白紙の君に、誰にも気づかれないように穢れた色を落としながら。
雨は降り続け、当分の間、止みそうに無く。
鮮やかさが薄れゆく記憶を、少しだけ悲しみつつ。
永く続く時間とすぐ終わる時間を往復しながら。
メソメソタイムをもう少しだけ延長させながら。
ここから離れる気持ち・ここから出発する気持ちは出来ているんだけど、
弱い君がまだ後ろで泣いていて。
どちらの君も、君を大切に想っていて。
前を向く君も後ろで泣いている君も、君の色彩で。
ああ、少しだけ君、大人になれたのかな。
雨、少しだけ止んできて。
忘れることで、彼との思い出を抱きしめて。
心の隅に綺麗に片づけることで、いつでもその記憶を開けれるようにして。
思い出の中の彼に、失礼のないように。
心腐ったままでは、大切な思い出も腐敗してしまいそうで。
少しずつ少しずつ慎重に、大切な記憶を消していって。
新しい自分を応援するために。
これまでの自分を綺麗に遺しておくために。
思い出の中の彼を、そのままにしておくために。
久遠と刹那を、君は静かに両立させていった。
おてんば少女の危険が多く伴う冒険成長記録はようやく終わりに近づき。
自分の愛し方を知らなかった少女が、他者へ愛を注ぎ捧げていくことで愛の流れを学びゆく。
時にヒトの醜さに触れて。時にヒトの愚かさに触れて。
ヒトというものを、様々な角度から見て感じて。
もうたぶん、雨は止んでいる。
もう降ってはいないのか。
そうか。そうか。
また、降って欲しいな。
晴れ続いたらまた、雨、降り始めて欲しいな。
また、戻れるから。
綺麗にしたままの思い出に、また帰ることが出来るから。
二度と戻らない時間を噛みしめがら君は微笑して、
ゆっくりと前へ前へと進んで行った。
誰かの令では無く自らの澄んだ意志で、君は歩みを再開していった。
音楽解析on twitter 解析曲名「もう恋なんてしない(槇原敬之)」
おわり。